AI画像生成で主役を明確に!プロンプトで被写体を際立たせる基本と応用
はじめに
AI画像生成では、プロンプトに記述した内容に基づいて画像が生成されますが、意図した被写体や要素が背景に埋もれてしまったり、複数の要素の中からどれが主役なのか判別しにくくなったりすることがあります。本記事では、このような課題を解決し、生成したい画像の主役を明確に際立たせるためのプロンプト作成術について解説します。具体的なプロンプト例を交えながら、その考え方と応用方法をご紹介します。
被写体が埋もれてしまう課題とその原因
AI画像生成において、被写体が目立たない画像が生成される主な原因は、プロンプトの記述方法にあります。
- 漠然としたプロンプト:
a woman in a park
のように抽象的なプロンプトでは、AIは画像を構成する要素の優先順位を判断しにくく、人物と背景が同じくらいの重要度で描画される傾向があります。 - 情報過多なプロンプト: 多くの要素を羅列しすぎると、それぞれの要素の重要度が薄まり、どの要素を強調すべきかAIが混乱することがあります。
- 重み付けの欠如: 特定の要素を特に強調したい場合、その意図がプロンプトに反映されていないと、一般的な比率で描画されてしまいます。
主役を際立たせるプロンプトの基本原則
主役を明確にするためには、以下の基本原則を押さえることが重要です。
1. 被写体をプロンプトの先頭に記述する
AIモデルはプロンプトの先頭に記述された要素をより重要視する傾向があります。最も強調したい被写体や要素は、プロンプトの冒頭に具体的に記述することをおすすめします。
2. 被写体を具体的に描写する
a woman
だけでなく、a beautiful young woman with long blonde hair, wearing a red dress
のように、詳細な特徴を加えることで、AIはその被写体をより鮮明に描き出そうとします。
3. 強調キーワードや重み付けを活用する
特定の要素を強く強調したい場合、AI画像生成ツールによっては、そのための構文が用意されています。
- Midjourney: 丸括弧
()
を使用して強調します。例えば((beautiful woman))
とするとbeautiful woman
が強調されます。括弧の数を増やすことで強調度を上げることができます。 - Stable Diffusion (AUTOMATIC1111など): カンマ区切りで要素を並べ、その後ろにコロンと数字を記述することで重み付けを行います。例えば
beautiful woman:1.5
とするとbeautiful woman
が1.5倍の重みで認識されます。デフォルトは1.0です。
4. 背景を制御する
主役を際立たせるためには、背景をシンプルにする、ぼかす、または特定の要素を含めないといった方法が効果的です。
- シンプルな背景:
plain background
,white background
,minimalist background
などのプロンプトを追加します。 - ぼかし効果:
shallow depth of field
,bokeh background
,blurred background
などで、背景を意図的にぼかします。 - ネガティブプロンプトの活用: 主役から注意をそらす可能性のある要素をネガティブプロンプト(
--no
やnegative prompt:
など)で除外します。
5. 構図や画角を指定する
被写体を画面上でどのように見せるかを指定することも、主役を際立たせる上で有効です。
close-up shot
: 顔や上半身に焦点を当てるfull shot
: 全身を写すmedium shot
: 腰から上を写すdramatic angle
: 劇的な角度から写すfrom below
,from above
: 特定の視点から写す
具体的なプロンプト例と解説
ここでは、「失敗しがちなプロンプト」と、それを改善した「効果的なプロンプト」を対比してご紹介します。
例1: 単一の被写体を明確に際立たせる
失敗しがちなプロンプト例:
A woman in a field.
解説: 女性の姿は描画されますが、牧草地の風景の中に埋もれてしまい、女性が主役として引き立たない可能性があります。
効果的なプロンプト例:
Close-up shot of a beautiful young woman, long flowing hair, looking directly at the viewer, soft smile, golden hour light, blurred wildflower field background, cinematic lighting.
解説:
* Close-up shot
: 被写体の顔や表情に焦点を当て、主題を明確にします。
* beautiful young woman, long flowing hair, looking directly at the viewer, soft smile
: 被写体の特徴や表情を詳細に記述し、魅力を高めます。
* golden hour light, cinematic lighting
: ライティングを指定することで、被写体を美しく照らし、視覚的な強調を行います。
* blurred wildflower field background
: 背景をぼかすことで、被写体への視線誘導を強めます。
例2: 複数の要素がある中で特定の主役を強調する
失敗しがちなプロンプト例:
A cat and a dog in a living room.
解説: 猫と犬が等しく描画され、どちらが主役なのか曖昧になることがあります。
効果的なプロンプト例(Midjourneyの場合):
A fluffy cat sitting on a cozy sofa, ((looking at the camera)), a small dog playing with a toy in the background, warm natural light, cozy living room.
解説:
* A fluffy cat sitting on a cozy sofa
: 猫をプロンプトの先頭に置き、具体的な行動と場所で描写します。
* ((looking at the camera))
: 丸括弧で猫の行動を強調し、視線を集めます。
* a small dog playing with a toy in the background
: 犬を背景要素として配置し、猫が主役であることを明確にします。
効果的なプロンプト例(Stable Diffusionの場合):
A fluffy cat:1.5 sitting on a cozy sofa, looking at the camera, a small dog:0.7 playing with a toy in the background, warm natural light, cozy living room.
解説:
* cat:1.5
と dog:0.7
: 数値による重み付けで、猫を犬よりも明確に強調します。
例3: 物体を主役として引き立てる
失敗しがちなプロンプト例:
A cake on a table.
解説: 単にケーキが存在するだけの画像になり、食欲をそそるような魅力が伝わりにくい可能性があります。
効果的なプロンプト例:
Highly detailed studio photograph of a gourmet chocolate cake, focus on the rich frosting and delicate cherry decoration, shallow depth of field, professional food photography, dark elegant background.
解説:
* Highly detailed studio photograph
: 写真のクオリティとスタイルを指定し、被写体の描写を向上させます。
* focus on the rich frosting and delicate cherry decoration
: ケーキの具体的な魅力を強調する要素を指示します。
* shallow depth of field
: 背景をぼかし、ケーキに視線を集めます。
* professional food photography
: プロの撮影のような品質を求めます。
* dark elegant background
: 背景を制御し、主役のケーキが引き立つように調整します。
応用と試行錯誤のヒント
ネガティブプロンプトで不要な要素を排除する
主役から視線をそらす要素や、被写体を曖昧にする要素は、ネガティブプロンプトで明示的に排除します。
--no blurred background, no distracting elements, no other people
(Midjourneyの場合)negative prompt: blur, messy background, extra limbs, low quality
(Stable Diffusionの場合)
パラメータを調整して画像を制御する
アスペクト比 (--ar
) やスタイルの度合い (--stylize
、--style raw
など) といったパラメータを調整することで、構図や画像の雰囲気をさらに制御し、主役の存在感を高めることができます。
- アスペクト比: 被写体をどのようにフレームに収めるかによって、印象は大きく変わります。例えば、人物のクローズアップであれば縦長 (
--ar 2:3
)、風景の中に人物を収めるなら横長 (--ar 16:9
) が適している場合があります。 - スタイルパラメータ:
Midjourney
の--style raw
や--s
など、プロンプトの指示により忠実に従うように調整することで、意図しないスタイル変換を減らし、被写体の描写を優先させることができます。
試行錯誤のプロセス
プロンプトは一度で完璧なものができるとは限りません。小さな変更を加えて何度も試すことが、理想の画像を生成する近道です。
- 基本的なプロンプトで生成: まずは最も伝えたい被写体と簡単な状況を記述して生成します。
- 強調や詳細を追加: 生成された画像を見て、主役が曖昧であれば強調構文や詳細な描写を追加します。
- 背景や構図を調整: 主役が引き立つように、背景のシンプル化、ぼかし、構図の指定などを試します。
- ネガティブプロンプトで改善: 意図しない要素が混入した場合は、ネガティブプロンプトで排除します。
まとめ
AI画像生成において、プロンプトで被写体を明確に際立たせることは、イメージ通りの画像を生成するための重要なスキルです。プロンプトの記述順序、強調構文の活用、背景の制御、そして構図の指定といった基本的なテクニックを組み合わせることで、生成される画像の品質は飛躍的に向上します。
本記事でご紹介したプロンプト例や考え方を参考に、ぜひご自身のAI画像生成で実践してみてください。試行錯誤を重ねることで、あなたの創造性がさらに広がることを願っています。